三島町の編み組細工といえば、伝統工芸のファンの間では、
ずいぶん名前の知られた製品。

毎年6月に開催される「工人まつり」には、日本全国から編み組細工を求めて人がやってきます。
名人の作品ともなると、かなりの高額になることも。
それでも、ふたつとない手作りの品には代えがたい魅力があります。
 
そもそも編み組細工とは奥会津地方の山間部に暮らす人々の、冬季の手仕事として受け継がれてきた技。
おそらくはそれぞれの家で、囲炉裏の火を囲みながら、親から子へ、子から孫へと大切に伝えられてきたものでしょう。
生活用品もほぼすべて手作りだった時代には、カゴやザルなどの道具は自分たちが使うほか、売って生活の糧とすることもできました。
しかし、安価で便利な既製品が増えるにつれ、手間のかかるものづくりは徐々に下火になっていったと言います。
1970年代、ものづくりの文化を後世に伝えていくため、三島町で生活工芸運動が起こりました。
先祖が代々伝えてきた技を、絶やしてはいけない。
素朴な手仕事をもう一度見直そう。
そんな動きが広がり、1986年には「生活工芸館」が誕生。
ものづくりの拠点として、現在も体験教室や後継者の育成が行われています。

編み組細工の主な材料はヒロロ、山ブドウ、マタタビなど、山に自生する植物。これらは、秋に工人(編み手)が自ら山に入り、作る分だけ採取することになっています。
採ってきた材料は乾燥させ、時に割いて皮を剥ぎ、なめしたり、またはいくつかを束ねて縄に綯ったりしながら下準備。
底になる部分から少しずつ編み上げていきます。

材料の性質に合わせて作る製品を変えるのも特徴。
たとえば柔らかいヒロロは、縄状にして細い目で編み、手提げバックやポーチになります。編み目を変えたり、途中にアカソを混ぜ込んだり、作り手次第でデザインが変わります。
山ブドウつるの皮は頑丈な利点を生かしてカゴに。持ち手をつけたかごバックは、編み組製品の中でも特に人気の品です。
竹のようにしなやかなマタタビは、水に強く抗菌効果もありザルにするのが一般的。これでお米を研ぐと、ごはんがいつもよりおいしいなんて噂も。
時には材を組み合わせたり、いかにオリジナリティを出すかは編み手の技の見せどころ。
 
ある職人さんは、ものづくりに向かう姿勢について「おもしゃぐねえとやんねえべ?(楽しくなかったらやらないよ)」と話してくれました。
三島の人々にとって編み組細工は大切な技術である一方、楽しみや娯楽でもあったのかもしれません。