保存食と並んで、奥会津の食を象徴するものが、
発酵食品です。

冬がはじまるまでに作り終える保存食と違い、発酵食品は収穫が終わり、空気が澄んで、雑菌の少なくなる冬場が仕込みのタイミング。
 
その代表が漬物です。
奥会津では白菜漬けや沢庵をどの家庭でも樽いっぱいに作って納屋や蔵で保存しておくのが常でした。
まだ冬の始まりには浅漬かりだった漬物が、味が濃く、酸味が増していくにつれ、春が近づいてくるのを感じていたと話す人もいます。
 
味噌も、各家庭で作っていた発酵食品のひとつ。
奥会津の味噌は、大豆を使った味噌で、麹はそれほど多くなく、赤味噌に近いような濃い色合いと塩味の強さが特徴です。
味噌は各家庭の料理の基盤。
そのため家々で味わいが異なるのが当たり前でした。
地域に1軒は必ずあった味噌屋さんは、いつしか集落単位で味噌作りを請け負うようになり誕生したと考えられています。

お酒好きの多い奥会津ですから、その昔、どぶろくも盛んに作られました。
しかし、当然のことながら酒類の自家醸造は厳禁。
役人が調査にやってきたことがわかると、各自家で作ったどぶろくを一斉に川に流したため、川の水が白くなったなどという笑い話も残っています。

また、山から獲ってきたけものの肉も、冷暗所で保管し食べていたとか。
これは、数年前から飲食店でブームになっている熟成肉と同じ手法。
タンパク質がアミノ酸に変わり、水分も抜けておいしくなるというメカニズムを知らなくても、ただ「こうやっどくと、うめえだ」と昔の人なりの経験であみ出した食べ方だったのでしょう。
 
どうやって食べるとおいしいかを研究し、食を楽しむという意味では、奥会津の人は相当のグルメと言えます。
そして、奥会津では厳冬期に「雪中納豆」も作られました。
「雪中納豆」とは、雪の中で発酵させて作る納豆のこと。
茹でた大豆を「つづっこ」と呼ばれるわらで包み、地中深く掘った雪穴の中に埋めて数日。
中には大豆とともに「ヨメ」と呼ばれる結び昆布のようなかたちのわらを忍ばせます。
なぜ「ヨメ」なのかは、お嫁さんを大事にする心の表れなのだとか。
そうしてできた納豆はねばりこそ少ないながら、豆の風味の強い上品な味わい。
大豆を包む「つづっこ」も、神様にお供えするものはエビを見立てて立派に作り、自分たちで食べる分はそっけなく束ねるだけ、というのも面白い文化です。
 
身近に食べられてきたおいしいものを知っているがゆえ、多国籍な料理には保守的な人も多い奥会津の人々。
でも、意外にもピザ好き、パン好きが多いそう。
外国の食文化への憧れか、はたまた何か特別な親和性があるのか。
どちらも生地を発酵させて作る食べものだけに、発酵文化のひとつとして今後研究していきたいテーマでもあります。