周囲を山々に囲まれた三島町は、
特別豪雪地帯にも指定される雪深いまち。

早いときで11月から、4月ごろまで雪が残り、ピーク時には2メートルほども積もります。
それゆえ、三島町の人々の暮らしは、雪とは切っても切り離せない関係にあります。
家々の周囲が板で覆われるようになると、そろそろ冬がはじまる合図。
これは雪囲いといって、建物が雪の重みで倒壊したり、窓ガラスが割れるのを防ぐために行います。
準備が終わると町はいつも以上にひっそりとし、まるで家ごと冬眠に入るかのような雰囲気が漂います。
雪が降ると野良仕事はできません。
じっと春を待つ間、人々は家の中で道具の手入れや、ものづくりに勤しみました。
三島町の伝統工芸、編み組細工も、そんな冬の暮らしの中で受け継がれてきた手仕事のひとつ。
秋に収穫しておいたヒロロや山ブドウやマタタビを使って編み上げたカゴやザルは丈夫で長持ちし、生活に欠かせないものでした。
素朴でありながら、美しい佇まいは雪国に暮らす人々の我慢強さやひたむきさの象徴のようにも見えます。
雪国ならではの生活の知恵といえば、保存食も忘れてはいけません。
今のように手軽にスーパーに買い物に行けなかった時代、人々はあらゆる保存食で冬の食卓を彩りました。
春に採取した山菜は、塩漬けしたり、乾燥させたり。
大根や白菜は大量の漬物にして、冬の常備菜にしました。

雪を天然の冷蔵庫として活用し、野菜の保管に使うこともあれば、寒風にさらして作る凍み餅や凍み大根など冬の寒さがなければできない食べ物も作ります。
中でも雪中納豆と呼ばれる、雪の中で発酵させる納豆は冬のごちそう。
積もった雪を1メートル以上も掘り、藁に包んだゆで大豆を埋め、数日。
取り出した納豆はふわっと湯気が立ち、それまで雪の中にあったとは思えないほど。「あの味は忘れられない」と食べた人は言います。

どれも雪があるからこそ生まれた文化、生活の知恵。
雪は自由を奪い、時に命を奪う厄介者でありながら、大地を潤し、生き物を育み、この地で暮らす人にさまざまな恵みを与えてきました。
それが一番感じられるのは、やはり雪解けの頃。
厚い雪に覆われていた地面から土がのぞき、ふきのとうやつくしが芽を出し、雪解け水が勢い良く川を流れるようになると春はもうすぐ。
自然も動物も人も、一斉に目覚め始める春の訪れは格別です。
厳しい自然と隣あわせで生きるまちには、ほかでは味わえない喜びがあるのです。